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大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)1225号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(一) <証拠>を綜合すると、原被告はいずれもスチール製吊棚の販売を業としていた者で、原告は昭和四二年七月末頃から昭和四三年五月初旬頃までの間前後十数回にわたり被告から前記商品の仕入れをなして来ており、被告に対する代金の支払はいずれも住友銀行常盤台支店における被告の妻篠野悦子名義の預金口座に振込送金する方法によつてなされていたことが明らかであり、

(二) 本件売買契約成立後昭和四三年五月末頃原告から住友銀行常盤台支店における前記篠野悦子名義の預金口座に金五二万円が振込送金され、被告においてこれを受領したことは当事者間に争いがない。

上記(一)、(二)の事実に<証拠>を併せ考えると、原告主張のとおり本件売買契約の相手方は被告であり、右売買契約は被告がスチール製三段吊棚(甲吊棚)五〇〇台を代金単価四三〇円で、同四段吊棚(乙吊棚)六〇〇台を代金単価五八〇円でそれぞれ原告に売渡すことを内容とするもので、被告は契約成立と同時に原告から代金の内金六万円の支払を受けるとともに甲吊棚一〇〇台を原告に引渡し、残余の吊棚は七日以内に鉄道コンテナー便で大阪市旭区中宮町五丁目一一番地所在の原告の事務所に送付して引渡すことを約し、他方原告は右鉄道運送経費の負担を引受け、被告から売買残代金のうち金三、〇〇〇円の値引を受けたうえ、残代金五〇万円及び鉄道運賃の費用前払金二万円を帰阪後直ちに住友銀行常盤台支店における前記篠野悦子名義の預金口座に振込送金する方法によつて支払うことを約し、前述のとおり金五二万円を同預金口座に振込送金して自己の債務の履行を終えたことをそれぞれ認定することができる。<反証排斥>。

二、その後原告が被告から右契約上の債務の履行として同年六月六日甲吊棚二九八台及び乙吊棚二〇〇台、同月一八日乙吊棚一〇二台の各送付引渡を受けた事実は原告の自認するところであるが、残余の甲吊棚一〇二台及び乙吊棚二九八台の引渡義務を被告が履行したことについては何等の主張立証もなく、原告が昭和四三年九月二日付書留内容証明郵便をもつて被告に対し、右引渡未了分の吊棚を同書面到達後七日内に送荷されたい旨の催告を発し、同書面がその頃被告に到達した事実は被告において明らかに争わないので、これを自白したものと看做す。しかして、本件訴状には被告の甲吊棚一〇二台及び乙吊棚二九八台についての引渡義務の不履行を理由として被告との間の売買契約中右不履行部分を解除する旨の記載があるところ、右訴状が昭和四四年三月二八日被告に送達されたことは記録に徴して明らかであるから、本件売買契約中前記不履行部分は同日限り適法に解除されたものというべきである。

三、売主の履行遅滞により売買契約が解除されたときは、買主の有していた本来の給付並びに遅延賠償請求権は填補賠償請求権に変ずるものと解せられるので、買主は売主に対し、原状回復の請求に代えて、契約解除時における本来の給付の目的物の価格相当の賠償を請求することを妨げない。但し、この場合において買主の代金債務に一部未履行分があるときは、損益相殺により右未履行額を賠償額から控除すべきことは勿論である。以下、本件における賠償金額について考えると、本件売買契約が一部解除された昭和四四年三月二八日当時における甲吊棚及び乙吊棚の卸売価格はこれを直接認定しうる資料がないが、右売買契約の締結された昭和四三年五月二六日当時と比べて卸売価格に変動のあつたことを窺わせる事情は認められないし、また原被告が共にこの種製品の取扱業者であつたことからみてその取引価格が当時の卸売価格に比し特に高価又は廉価であつたものとも考えられないので、本件売買契約における約定値段、すなわち甲吊棚は一台につき金四三〇円、乙吊棚は一台につき金五八〇円をもつて契約解除当時の卸売価格と推定するのが相当である。そうすると原告の損害額は甲吊棚一〇二台分及び乙吊棚二九八台分の価格合計金二一万六、七〇〇円であり、原告は自己の代金債務の全部を履行済であることは既に明らかにしたとおりであるから、被告は損害賠償として前記金額を原告に支払うべき義務がある。(近藤浩武)

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